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■ 拡大床治療

6歳の頃から前歯の永久歯への生え替わりが始まります。永久歯は乳歯の1.5倍くらいの大きさがあるため身体や顎の成長が伴っていない場合にはきれいに並ばないことが多くあります。生え替わりが早ければ早いほどきれいに並びにくくなるのは普通に考えれば当たり前のことです。あとで身体や顎が大きくなっても一度乱れた歯ならびが自然にきれいになることはないので、この前歯の生え替わりの時に顎の成長を促してきれいに並べるのが拡大床治療です。この拡大床治療を当院で受けてきれいな歯ならびになったお子さんが多くいるのでその話を聞いて拡大床治療を希望される患者さんが多くいますがこの治療ですべてのお子さんがきれいな歯ならびになれるわけではないので、事前にネットなどでよく調べてから来院されることをお勧めします。
 

拡大床治療の評判

当院で拡大床治療を受けられた方の評判はそれ程悪くないと思いますがネットなどで「拡大床治療」と検索するとあまり評判が良くないのも事実です。評判が悪くなる理由はわかっていますが先ずはネットでこれらの記事をよく読んでいただくことをお勧めします。
 

拡大床治療の歴史

拡大床治療は以前よりヨーロッパを中心に行われていた治療法であり、いろいろな形の装置が用いられていました。 それらを整理し治療目標に応じてまとめたのがウィーンの歯科医シュワルツであり1938年に一冊の教科書にまとめたことでシュワルツの拡大装置と呼ばれるようになりました。 社会保障の充実したヨーロッパの各国では家庭で簡単にできる矯正治療法として広まり、北欧など自然環境が厳しい地域では通院回数が少なくて済む拡大床治療が一般開業医で保険診療として多く行われるようになりました。一方アメリカでは永久歯を抜歯してスペースを作り歯を画一的にキレイに並べる方法が確立され主流になっているため拡大床治療のように時間がかかり患者の装着状況によって治療結果が左右するような治療が行われることがありません。日本の歯科矯正治療学は歴史的にアメリカからの流れで発展してきたため矯正歯科専門で治療を行っている先生方の間では拡大床治療はあまり勧められていないのが現状です。簡単に云うと歯を抜かずに時間をかけて治療をするのがヨーロッパ的で、歯を抜いて短期間で完璧にキレイに歯を並べるのがアメリカ的と言えます。どちらの治療法も正しいと思いますのでご家庭、お子さんに合わせて治療法を選択する必要があります。
 

当院で行う拡大床治療の特長

日本で行われている拡大床治療にも色々な方法がありますが当院での特長は最初に永久歯に生え替わる上下4本の前歯を奥歯の生え替わりが始まる前までに顎を拡大してきれいに並べることです。そのため拡大床治療の期間は小学校1年生頃から4、5年生頃までの間に限定しており、それまでに目的が達成できない場合には別の治療法に移行します。またゆっくりスペースを獲得するようにしているのも特長で2週間に1回ネジを回すようにしています。一般的には1週間にⅠ回ないし2回ネジを回すことが多いようです。ゆっくり進めるので一日の装着時間はお家にいるときと寝ている間だけにしています。学校や自宅以外での装着はせずゆっくり拡大していくので治療期間が長くなりますが後戻りは少なく確実になります。治療開始時期が大切ですので時期を逸した場合には拡大床治療は行いません。一般的に拡大床治療の評判が悪いのは開始時期が遅く、いつまでも治療を長引かせ治らないことによるものが多いようです。 拡大床治療はスペースを作って永久歯がならぶスペースを作ることが目標ですので細かい歯の向きや角度まで整えられないこともあります。そんな場合には別の矯正治療が必要になります。
 

拡大床治療の開始時期

拡大床治療で顎のスペースを拡げられるのは11歳くらいまでです。そのため個人差はありますが遅くても小学校2年生までに始めなければなりません。下の前歯が生え替わりはじめた頃から下の前歯が4本、上の前歯が2本生え替わる頃までが始め時です。すでに上下4本とも生え替わってしまった場合にはすでに遅いことが多くあります。
上の前歯が2本、下の前歯が4本生え替わったところ
 

拡大床治療の進め方

  • レントゲン撮影を行い歯の生え替わりの進み具合や位置、先天欠如などがないかなどを調べます
  • 装置を製作するための歯型を採ります。はじめは吐きそうになって採れないお子さんも多くいますがトレーニングをしていけばほとんどのお子さんができるようになります。
  • 装置ができてきました。自分で脱着できるように練習します。装着する時間はお家にいるときで学校や塾には着けていきません。食事の時も外しておきます。夜寝ているときが一番大切ですので夕食が終わってからは装着しておくようにします。
  • 2週間に一度、自宅で拡大ネジを回してもらいます。1回ネジを回すと0.2ミリ拡がることになります。2~3ヵ月にⅠ回来院してもらい装置の調整を行います。
  • いつも口を閉じ、鼻呼吸をおこない、舌を正しく使ってお話ししたり飲み込むことが大切です。正しい口腔機能が身についていないときれな歯ならびにはなりません。装置の調整に来院したときに正しい口腔機能が行われているかを確認し訓練を行います。
  • 上下の4本の前歯がきれいに並んだら拡大は終了です。後戻りが起こらないように夜間の装着は続けてもらいます。
  • 奥歯の生え替わりが進むと装置を装着できなくなるので固定式の装置に変更し、4ヵ月にⅠ度の定期健診に移行します。
  • 最後の奥歯が生えてきたらすべての拡大床治療は終了です。この時でおおよそ中学2年生頃になっており、このように治療期間が長くなるのが特長ですのであらかじめご理解してから始めて下さい。

レントゲン検査

歯の大きさを確認
上下の拡大床装置
口の中へ入れたところ

上顎が広がったところ

ネジを回して装置を拡げます
拡大床治療前の状態
拡大床治療後の状態
元に戻らないようにワイアーで固定します
最後に一番奥の歯が生えてきて治療終了です
 

拡大床治療の費用

拡大床治療に使用する装置の装着時に170,000円の費用がかかります。その後の調整費はⅠ回3,000円から5,000円程度かかります。むし歯治療や口腔機能訓練などは保険診療でカバーされますのでそれらの治療が必要な時は保険診療となります。拡大床治療だけですべてがキレイになるわけではないので別の矯正治療が必要になった場合は別料金になります、おおよその治療費は別表のようになります。 歯ならびの相談で矯正専門の歯科医院に行かれた方はもっと高額の治療費の提示があったと思いますが、治療の目的や目標が異なりますので治療費だけを比較して医院を選択することはお勧めできません。矯正治療では短期間で集中的に治療が行われることが多いので、お子さんに完璧を求めるご家庭や治療期間に制限のあるかたは矯正歯科専門の医院を受診されることをお勧めします。
拡大床治療に関わる費用
治療内容治療費
(消費税込み)
備考
拡大床治療費上下で200,000円拡大床治療の費用です。
拡大床装置セット時にお支払いいただきます
調整料3,300円
or
5,500円
2~3ヶ月に1回調整を行います
追加の拡大床装置片顎 30,000円拡大床装置は構造上7.5ミリ以上は拡がりません
追加の拡大床装置が必要になった時に費用がかかります
紛失や通常の使用以外で破損した時にも同額かかります
リンガルアーチ上下で30,000円上下4本の前歯が並あとで装着していきます
その後別の矯正治療が必要になった場合は別途費用がかかります
 

拡大床治療でできること、できないこと

拡大床治療ではすべての歯がきれいに並ぶように顎の成長を促すことが目的ですので細かい歯の位置や角度までは調整できません。また歯が大き過ぎる場合には口の中で歯が目立ちすぎることになる場合もあります。日本人を含めたアジア系の骨格には特長があり、ヨーロッパ系の顔立ちとは基本的に違っていますが上下の歯を抜いたりすることでそれに近づけることもできます。矯正専門の歯科ではそのような目標を立てて治療を行うことが多く、そのために4本の永久歯を抜歯することもあります。拡大床治療では歯を抜かずすべての自分の歯でしっかり噛めることを目標にしていますので口元のきれいさを目的にする治療とは異なります。歯を抜いて口元をきれいにするのは大人になってもできる治療ですので、親としては先ずはお子さんのすべての歯を使ってきれいに歯をならべることを優先すべきで、あとで本人が口元が気になるというのであれば本人の意志で歯を抜いて矯正治療を行うべきであるというのが当院の考えです。
 

拡大床治療への誤解

拡大床治療は矯正治療ではありませんので完璧にきれいな歯ならびにできるわけではありません。また治療期間も長くなり期間限定の治療法ですので小学校の高学年になってから始めるのには向いていません。また拡大床治療で歯を並べる顎は拡がりますがエラの張った大きな顔になるわけではありません。歯を支える骨は歯槽骨、下顎全体は下顎骨と言って解剖学的には別の骨と考えられています。エラが張った大きな顎になるのは遺伝的な要素や咬む力が大きく影響します。拡大床治療を行ったからといって顎全体が大きくなるわけではありません。
 

拡大床治療を勧められない方

拡大床治療をいままで数多く行ってきましたが、思うような結果が得られなかったこともありました。結果的にお子さんに申し訳ないことになってしまい、そのようなケースを思い返すと以下の様なお子さんやご家庭では拡大床治療は勧められないと思っています。
  • お子さんの歯ならびと口元に完璧を求めている
  • 通院に時間がかかり長期にわたる通院ができない
  • 転勤が多く、引っ越しが多いご家庭
  • 鼻閉があって鼻呼吸ができない(耳鼻科での対応が必須になります)
  • お子さんが毎日きちんと装置を装着していることを管理できない
  • 他に優先しなければならい事が多くあって予約のキャンセルが多い
  • 矯正治療と拡大床治療の違いが理解できず費用だけに魅力を感じている